デザイナー歴35年、フォントの移り変わり

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版下・写植の時代から30年以上のデザイン経験をもつ私ですが、今回はフォントの進化について語りたいと思います。

Rusty typewriter on wooden desk evokes nostalgia generated by artificial intelligence

1.写植の黄金時代 – その中心、写研

昔、デザインの基本は版下技術と写植でした。写植とは文字を写真撮影し、それをページ上に配置する技法です。そして、この技法の頂点にいたのが「写研」。多くの専門家がその技術を信頼し、写研は日本のタイポグラフィの標準とも言える存在でした。それぞれの文字の間隔やバランスが求められるこの時代、技術と感性がとても価値があったのです。

写研の背後に隠されたエピソード

  • 当時、写研の文字盤は1書体ごとに30万円以上もしていました。高価な投資でしたが、クオリティを求めるプロフェッショナルたちは避けられない経費として捉えていました。
  • 文字詰めの作業は一度仮打ちしなければならず、ベタ打ちの倍以上の時間がかかっていました。
  • 校正指示で「トルツメ」は特にやっかい。細かい調整が求められ、デザイナーや編集者の頭を悩ませる存在でした。

2.デジタルの時代到来 – モリサワ、Fontworksとともに

80年代半ばから、デジタル技術の進展でデザインの世界は大きく動き始めました。特に「モリサワ」と「Fontworks」はその先頭を走っていました。モリサワはその高いクオリティと種類の豊富さで、新たなデジタル時代の標準を築きました。同時に、Fontworksは新しいアイディアや技術をもって、デザインの世界に風を送り込んでいます。

私のデジタルフォント時代の思い出

当時は1書体ずつフォントを購入していました。写研の文字盤の慣習がまだ残っていたからです。しかも、画面表示用とプリンター用のフォントは別々に買わなければならなかったのです。表示用フォントを購入しない場合、画面上には粗い文字が表示され、とても見づらかったのを覚えています。そして、PSプリンターや出力機ごとにもフォントを購入する必要があり、多くの書体を持つのは非常に困難でした。


私たちは、使用できるフォントのリストを作成して、それをクライアントに説明することもしばしば。そんな中、安価で多くのフォントを使用できる「ダイナフォント」はまさに救世主でした。ただ、これはTrueType(トゥルータイプ)だったため、プリンターに直接インストールすることができませんでした。

このデジタル化の波の中で、写研は徐々に影を潜めていきました。

長年の文字盤に対するこだわりからデジタル化への移行が遅れ、技術の更新が追いつかない中で、市場のニーズは変わっていきました。MACによるデザインへの移行と共に、多くのデザイナーがデジタルフォントへとシフトしていったのです。写研の衰退は、技術変革の中で、伝統とのバランスを取りながら新しい変化に対応できなかった典型的な例として語られます。

3.インターネットとともに

最近では、インターネットの拡大とともに、フォントの役割も大きく変わりました。特に、Webフォントの技術が進む中、オンライン上でも魅力的なフォントが利用されるようになりました。そして、フォントの購入スタイルも変わってきました。以前は1書体ずつ購入するスタイルだったのが、今では「Morisawa Fonts」や「新LETS」のようなサブスクリプション型サービスに移行し、年間契約で様々な書体を自由に使用できる時代になりました。便利に、そして経済的にフォントを利用できるようになり、デザインの幅もさらに広がりましたね。

あの頃と比べて、文字の背後にあるストーリーには深さがありますね。技術がどれだけ進んでいても、伝えることの大切さは変わりません。フォントというツールを通して、デザインの楽しさを再認識できると思います。

かい

字の歴史って、改めて深いなって感じますね。テクノロジーが進化しても、コミュニケーションの基本は変わらない。それを支えるフォントの背景を知ると、デザインするのもまた一味違って楽しくなりそうです。

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